My
Lost Face
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2003年1月4日・・・都心のJ医院は朝一にもかかわらず、かなり混んでいた。正月明け最初の診療日。しかも土曜日だった。ずいぶん前に来たことがあったが、何の用だったかはっきり覚えていない。同級生が務めていたことがあったので、健康診断書かなにか書いてもらうためだったかなぁ??・・・ここの診察券は持っていたが、すっかり様子が変わっていてどうすればいいかも分からない。基本的に病院というところとは縁がなかったので、受付方法もよく分からない。 ほどなくして、名前を呼ばれ中に入る。決して若手ではない風格を備えた女性のドクターが診察にあたってくれる。言葉や対応もすごくはっきりしていて、信頼に足る印象を受けた。「顔が動かない。麻痺している。トロンボーンという楽器のプレーヤーなので大変困る。」という趣旨のことを訴えると、大変親身になって対応してくれる。眉を上げて・・・「ウーー」って言ってみて・・・「イーー」は?・・・と、顔の動きを診る。 耳鼻科の「待合い」でこれまたえらく待たされる。朝早く来た意味はまるで無し。最初から分かっていればこんなことには・・・。待っている間にも、ますます顔が動かなくなる感じがしていた。目の前で、とても大事なものが失われていくのに、為す術もなくただ待っているだけ・・・このストレスは実に耐え難い。
やっと呼ばれる。たぶん同世代かちょっと上くらいの男性のドクター。初診の患者さんをたくさん見ている様子だった。高い声で早口なのが印象的。テキパキとスピーディーに診察をこなす。5〜6室ある診察室にはすべてドアが付いているものの、中の会話は全部外に聞こえていた。一番奥の部屋の、このドクターの声は一際だった。ペインクリニックで言ったことと同じ事を訴えた。もちろん、トロンボーン奏者なので大変困っていることも・・・そして、どんどん動かなくなっていることも・・・ 「最近耳やその周りが痛くなかったか?」などの問診があり、耳の中を診られる。左右の顔の動きを比較して麻痺の程度を評価する検査(柳原法)、耳に圧力をかけたり、いろいろな大きさの音を聞いたりする聴力検査、血液検査、目に薄い紙を挟んで涙の量を測定する検査(シルマー法)などなどが振り回されるような勢いで行われる。看護士さんも実に機敏。 ・・・顔の麻痺なのに、意外と変なところを調べるもんだな・・・ 一通りの検査を終え、診察室に戻ってきて「末梢性の顔面神経麻痺」だろうと診断される。病気についての知識は全くない。病気になる前に、その病気についてよく知っている人はほとんどいない。 予言通り、間違って最初に受診してしまったペインクリニックに戻って、首の根本から、ものすごく長い針の付いた注射器で奥深くに麻酔薬をぶち込まれた。これは、星状神経節ブロック(SGB)といって、首の奥の方にある交感神経の集まりを麻痺させて顔面の血流を良くする方法。ものすごく、痛くて、恐怖感があった。 再度耳鼻科に戻り、帰り際に、「この病気の場合、お薬を飲んでも症状が悪くなることがありますから・・・」と言われた。「・・・悪くなることもありますが、大丈夫ですよ。心配しないでくださいね。」という意味に受け取った。
でも、これは大間違いだった。 |
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