自作品についてのコメント集

作曲した作品について公開したコメントをまとめてみました。

Index

 

 

Zui Zui Zukkorobashi(1991)

当サイトオリジナルコメント

 1991年、桐朋学園大学金管10重奏マスタークラス(指導;三輪純生氏)のために作曲。その後、後輩たちにより再演されている。おなじみの「ずいずいずっころばし」のメロディーが、遊び心にあふれた多彩なスタイルに変化していく。KOOWS Edition より出版され、好評を得ている。(当サイトオリジナルコメント)

<Brass Ensemble Rustic>

 

System 7 for 3 Trombones(1996)

ハイパートロンボーンズHPより

 1996年、ハイパートロンボーンズ「自作自演コンサート」にて初演。アップル社のコンピュータ、マッキントッシュのイメージをヒントに作曲された。標題のシステム7は、当時のOSの名称。「7」という数字にこだわって構成されており、7つの音から なるテーマによる7つのバリエーション。また、奏者の身体的動きにも指示があったり、実質1分以上にもなる長いポーズなどが表現の重要な要素になっている。「CDを聞 くだけで完結してしまうような音楽ではなく、コンサート会場に足を運んで初めて真価の分かる作品を作ろうという気持ちで創った。」会場でおこるハプニングも含めて、聴衆をも巻き込んだ形で作品が完成する。2000年、日本トロンボーン協会と日本現代 音楽協会の共催によるトロンボーンフェスタにおいて再演され好評を博した。

1. System 7
2. Love of a Professional-composer
3. 32bit address
4. System error-Restart
5. After Dark
6. Finale
7. Encore

 

現代の音楽展2000 トロンボーンフェスタ プログラムより

 七変化、七曲がり、七色、七つ道具など「7」という数字はバリエーションを象徴する数として捉えられています。(因みに、トロンボーンも7つのポジションを持っています。)この作品は1996年、ハイパートロンボーンズの「自作自演コンサート」のために作曲しました。C C Db C F Eb C という7つの音からなるテーマによる7つのバリエーションです。そもそも「システム7」とは、作曲当時使用していたコンピュータのシステムの名称です。この機械仕掛けの不思議な箱に対するイメージをもとに作曲しました。・・・・しかしながら、これらの事は、聴衆のみなさんにとっては大した意味を持ちません。ただ単純に作品を楽しんでいただければ本望です。

<Hyper Trombones>

 

Grand Finale(1996)

ハイパートロンボーンズHPより

 1996年に初演された「システム7」の第6楽章「フィナーレ」は、当初、より長い作品として作曲されたが、他の楽章とのバランスや演奏上の体力の配分などを加味して現行の長さに縮小されました。この「グランド・フィナーレ」は、いわば、ノーカット版!単品でコンサートのステージに上げられるサイズです。「システム7」全曲の演奏は難しいという皆さんにも、気軽に取り組んでいただける作品です。カルテットに引けをとらない重厚ハーモニーがご好評いただいており、その声に推されての登場です。

<Hyper Trombones>

 

FANFARE on the Peony II(2005)

KOOWS Edition 作品紹介より

 コンサートのオープニング用に創られたファンファーレですが、E〜Dの音をテーマにディレイ効果や変則的なリズムなどを用いて、純粋にトロンボーン・ドュオとしての面白さを引き出した作品になっています。短いですが、格調高く、内容の濃い作品です。

当サイトオリジナルコメント

 2005年2月25日のピオニイ第2保育園でのコンサートのオープニング用に書き下ろしたオリジナル作品。短いファンファーレですが、格調高い雰囲気をつくり出したいと思って創りました。テーマは、愛娘の名前からひねり出しています。

<Trb. 大内邦靖・井口有里>

 

Fanfare for Blue and Green(2006)

KOOWS Edition 作品紹介より

 海と森の出会う町そして夕日の町、西伊豆町でのコンサートのオープニング用として作曲。のびやかにうたう海のテーマと戯れる森のテーマがひとつに融けあっていく構造になっています。

 夜明けとともに目覚める碧・・・漆黒から生まれた碧
  碧はしだいにその明るさをまし緑を映す・・・にわかに緑はざわめきたつ
   碧は限りなく碧く賛歌を唱い 緑は限りなく緑に躍り戯れる
 あれほど碧かった碧も あれほど緑だった緑も
  一日の終わり すべてまばゆいオレンジの中に融けてゆく・・・

 トロンボーンのみでの演奏も可能ですが、付属のCD-Rに収められた波の音や鳥の声とともに演奏したり、照明などを利用すると演奏効果は絶大です。技術的には比較的平易に書かれています。

 

当サイトオリジナルコメント

 2006年6月、西伊豆町でのコンサートのオープニング用に作曲。海と森が出会う西伊豆町の自然をイメージして創りました。西伊豆は本当に自然の色彩が豊かな町。釣りや海水浴、シーカヤックなどでよく訪れる、大好きなところです。

−中略−

伴奏には、楽音ではなく、自然の音を使用していますが、楽音同様に聴き分けることを要求しています。

<Trb. 大内邦靖・井口有里>

 

Stellate Relation for 5 Trombones(2008)

玉川大学トロンボーンアンサンブル 第2回演奏会 プログラムノートより

 この宇宙(Universe)で5つの星達(Stars)が遭遇します。それぞれに個性的な輝きと重力をもつ星達の接近は、この時空にひずみと不協和をもたらしました。均衡を求めて星達はお互いの距離や役割について模索し始めます。いったんは、自らを最も規範的な法則に則って変形することで、それぞれのスタンスを得ようと 試みますが、彼らの個性的な輝きは、それを容易には実現させませんでした。しかし、彼らは気付きます。自らの変形ではなく、それぞれがブレのない、よりPureな輝きを放つことで得られる、超自然的均衡「星状の関係」が存在することを・・・

x+5+5+5+5=X+6+9
X=x+3+5
この極めて単純で、矛盾する2つの方程式が同時に成り立つのだと!

 

「よーし!今年は専攻生のためにオリジナルの5重奏書いてやるか!」
・・・と、つい口が滑っておせっかいなことを言ってしまってから数ヶ月、産みの苦しみを嫌という程味わうことになりました。夏までには・・・と思っていたのが、クリスマス・・・正月と時は過ぎ、完成は2月初旬。学生にとっては、大変な課題になってしまったことでしょう。最後の言い訳をさせてください。「彼らに 対する深い愛情と大きな期待を、一生懸命この作品の中に練りこみました!・・・ので・・・」
(2008年3月14日 大内邦靖)

<玉川大学芸術学部Trb.Ens.>
大塚智也・苅部辰哉・安達枝里子・上原美千絵・颯田昂平
(2008年11月9日LIVE録音)

 

System 7 for 7 Trombones(2009)

 1996年に、ハイパートロンボーンズのために作曲した「System 7 for 3 Trombones」を、玉川大学トロンボーンアンサンブル第3回演奏会(2009/03/22)のために、7重奏用にリメイクした作品。同大学芸術学部トロンボーン専攻生によるアンサンブルにより初演。

1. System 7
2. Love of a Professional-composer
3. 32bit address
4. System error-Restart
5. After Dark
6. Finale
7. Encore

 

 

 

Trombone Trio(2011)

 2011年夏に、トロンボーン3重奏のアカデミックなレパートリー拡充を目的に作曲しました。2012年3月25日、玉川大学トロンボーンアンサンブル第5回演奏会において、同大学芸術学部トロンボーン専攻生によるアンサンブルにより初演。2012年4月1日にHyper Collectionより楽譜が発売されています。

玉川大学トロンボーンアンサンブル 第5回演奏会 プログラムノートより

 トロンボーンアンサンブルの最もポピュラーな編成は4重奏で、そのレパートリーは他の編成に比べ群を抜いています。それに対し3重奏のレパートリーは極めて少なく、まだまだ一般的な編成とは言いません。トロンボーン3重奏の振興と普及には私自身、ハイパートロンボーンズのメンバーとして20年来取り組んでまいりましたが、この度、玉川大学芸術学部の学生諸君にもその重要な任務の一翼を担っていただく事にしました。

 本日初演していただく作品は、テナートロンボーン3本で演奏出来るように音域に制限を加え、中級者の方々にも広く挑戦していただけるように、極端な高等技術の使用を避けました。しかし、これまで、標題的な作品で具体的なイメージをサポートしていたのに対し、敢えて絶対音楽に拘りました。リズムやバランスなどのアンサンブル感覚も、かなり高度な要求をしています。これらを克服して、今後この作品に挑戦してくださる方々のお手本となるような演奏を期待しています。(大内)

ハイパートロンボーンズHPより

 ハイパートロンボーンズは結成(1991年)から20年以上もの間トロンボーン3重奏のレパートリー拡大とその可能性の追求に取り組んできました。このハイパーコレクションによって、私たちが開拓してきた作品を皆さんにお届けする事が出来るようになり、トロンボーン3重奏の認知度や実際にそれを楽しんでくださる方々が増大したことを大変嬉しく感じています。
 これまで、私達自身で演奏する為に開拓してきたレパートリーをご提供するという立場で多くの作品を発信してきましたが、今回は皆さんに演奏していただく事を想定したオリジナル作品をご提供するというスタンスで作品を創作しました。アカデミックな作品が極めて少ないこの演奏形態に、レパートリーを加えたいという思いで創ったこの作品は、複雑なリズムと高度なアンサンブル能力を要求しながらも、どのパートも中級者の方にも無理なく演奏できる音域に設定しました。演奏時間も4分程度で体力的にも実用的・現実的な長さです。各パートの音域は以下を以下に記します。

1st Trb. (Low Bb 〜 High G)
2nd Trb. (Low A 〜 High G)
3rd Trb. (Low F 〜 High Eb)

 決して技術的に簡単な作品ではありませんが、トロンボーン吹きが創った作品ですから、耳から聴く印象ほどは難しくはありません。アンサンブルコンテストなどで上位大会を目指すチームや、優秀なメンバーが3人揃った時は、是非挑戦してみてほしいと思います。
 初演は2012年3月25日、第5回玉川大学トロンボーンアンサンブル演奏会において、芸術学部の学生諸君が素晴らしい演奏を披露してくれました。右のサンプル音源は、ハイパートロンボーンズによるスタジオ録音です。テーマとなる1つのフレーズとそこから派生する音列を、伸ばしたり縮めたり、変形したりしながら随所に隠しました。そんな宝探しゲームを楽しみながら、急速部のドライブ感、コラール部の重厚感を表現していただけたら、こんなに嬉しい事はありません。(大内)

<Hyper Trombones>

 

TKB 25 for 2 Bass Trombones and 5 Trombones(2012)

 2011年に、「つくばトロンボーンクラブ」の委嘱により、同団25周年記念演奏会記念作品として作曲。同演奏会(2012年2月19日筑波ノバホール)において初演。「つくばトロンボーンクラブ」は、筑波大学管弦楽団のトロンボーンセクションとそのOB・OGによるトロンボーンアンサンブルで、年に1回の定期公演を行い、精力的に活動しています。初演にあたっては、難曲にも拘わらず、情感溢れる演奏を披露してくださいました。

つくばトロンボーンクラブ 第25回定期演奏会 プログラム寄稿文

 つくばトロンボーンクラブの25年もの重厚な歴史に最高の敬意を持ってお祝いを申し上げます。また、この節目に、記念作品の委嘱をいただいたことを大変光栄に感じています。
 このお話をいただいた時は、東日本大震災とそれに続く原発事故の直後でした。未曾有の惨事に、芸術は為す術もなく、私も惨状を伝えるテレビの前から離れられずにおりました。やがて、少しの落ち着きと僅かな光が見えてくると、音楽はようやく本来の力を取り戻したように思います。今では、あの惨状を伝えた同じテレビから、大所帯のアイドルグループが元気を振りまいています。そんな忘れられない時代を象徴する作品を記念作品としてお贈りしました。T、K、Bの3楽章から成り、本来、祝賀の意味合いを持つファンファーレを、敢えて冒頭ではなく作品の最後に配しました。作者なりの想いはありますが、それはともかく、聴き手の皆さん、演奏者の皆さんの人生や今の気持ちに照らして、純粋に音楽として楽しんでいただけたら本望です。大内邦靖(2012・1・10)

 

<つくばトロンボーンクラブ>
(2012年2月19日初演LIVE録音・録画)

 

10801 for Brass Quintet (2015)

2015年、富山県出身の金管楽器奏者によって結成されたBrass Collectionの委嘱により作曲され、同アンサンブルの演奏会「日本の作曲家による金管5重奏の新しい世界」(2015年9月27日富山 2015年9月28日滑川)において初演された。

プログラムノートより

「視覚的効果も取り入れたこれまでにないような作品を!」というご依頼を受け、動きを表現方法の1つとして取り入れた。富山に根ざしたアンサンブルからのご依頼だったので、「富山湾」にまつわる5つのエピソードを設定して作品を構築した。それらは連続して演奏される。

1)Divers in-ventilation 「ダイバーのインヴェン(チレイ)ション」
 バルブトレモロによるエアノイズやミュートの開閉により、立山の伏流水湧く海にエントリーするダイバーをイメージ。チューバとホルンによる反行型の短いインヴェンション。背景の5連符が「とやまわん」と聴こえたらもうあなたは作品の世界に・・・

2)Crystallazing lives 「水晶化した命」
 海中では透明な存在である白エビ・・・常動する節足もまた神秘的・・・大きな群に遭遇したらどんな光景だろう

3)Cramsy Big Mouth 「不器用な大口」
 富山湾の深海に生息するオオグチボヤ・・・その異様な姿に反し、動きはほとんどない。もしあんなのに噛みつかれたら・・
プレーヤーの動きによる表現において解釈の幅を広く設定しました。創意溢れる自由な発想でドラマを盛り上げて欲しい。

4)Winter Hot Rodder 「冬の暴走族」
 富山湾の冬の名物と言えば寒ブリ・・・徒党を組んで豪泳する様は圧巻!日本のではなく、アメリカの大型バイクのツーリングとイメージが被る。ちょい悪オヤジ達(ブリ)のサングラスが印象的!

5)Illuminated Sadness 「電飾された悲しみ」
 ホタルイカは季節になると海岸近くの海表に集団で押し寄せる。砂浜に打ち上げられ、とぎれとぎれに放たれる断末魔の青白い光・・・「ホタルイカの身投げ」と言うそうだ。

(文:大内邦靖)

 

 

Doppio Trio for 6 Trombones (2016)

プログラムノートより

 2016年、山梨トロンボーン倶楽部の委嘱により、結成20周年記念作品として作曲され、同年9月25日コラニー文化ホール(山梨県立文化ホール)にて開催された同団結成20周年記念演奏会において初演された。

 2組のトロンボーントリオがステレオ効果を発揮しながら展開します。当時の同倶楽部会長 久内(くない)氏(当時83歳 2017年1月逝去)の名字「971(くない)」の数列を元にテーマを紡ぎ出し、演奏しやすく実用性ある作品を目指して創作しました。連続する長3和音により祝祭感を演出しながら、頻繁にLRチャンネルが切り替わる仕掛けを仕組んでいます。生で聴く事でその効果は一層実感できるのではないでしょうか。
 余談ですが、タイトルに10と10を忍ばせ、邦題には「20年から30年へ」の思いを込め、As dur(明日のドア)を基調とするなど、ダジャレやこじつけ、おやじギャグ満載でこの歴史あるアンサンブルへのお祝いの気持ちを表現しました。

大内邦靖(2017年12月7日)

 

 

Mutants for Trombone Quartet (2018)

大内邦靖 個展2018 Mutants プログラムノートより

 2018年、大内邦靖個展2018のために作曲され、初演したトロンボーンアンサンブルENに献呈された作品です。以下の4つの楽章から成り、全編ミュートを使用して演奏されます。ミュートの特性をユーモラスに音楽に生かし、トロンボーン4重奏の「異形種」を目指した作品です。

1. Straight 2. Cup 3. Waw wah 4. March

以下に初演時のプログラムノートを転載します。
 本日の個展の為に作曲し、トロンボーンアンサンブルENの皆さんに献呈した作品です。4つの楽章から成り、3楽章と4楽章はAttaccaで演奏されます。

 1楽章では「異形種とは何だ?」という直球(Straight)な哲学に挑みました。少数派が異形種なら括り方次第ではあなたも、私も異形種かもしれない・・・と

 2楽章では「甘受すべき運命」(Cupにはそのような意味もあるそうです)について考えました。異形種を待ち受ける運命とは?抗えない運命に対する畏敬(?)の念・・・

 3楽章では「異形種の憩いや癒し」を取り上げました。さあ、皆さんも言ってみましょう!「いけいしゅのいこいやいやし」「いけいしゅのいこいやいやし!」

 4楽章では「異形種の大行進」を描きました。それぞれ歩みの違う個性的なMutantsが行進します。皆さんはぴったりシンクロしている行進がお好きですか?

 

 

Fanfare WISNY(2018)

第6回全国・市民トロンボーンアンサンブル・フォーラム パンフレットより

 2018年秋、第6回全国・市民トロンボーンアンサンブル・フォーラム(和歌山大会)実行委員会より委嘱を受け、同年10月7日和歌山市和歌の浦アートキューブで開催された同フォーラム演奏会で初演された。全国・市民トロンボーンアンサンブル・フォーラムは2013年に山梨からスタートした全国を巡会する生涯学習情報交換会で、アマチュアトロンボーンアンサンブル団体の皆さんがその運営や上達の為の情報をシンポジウムや演奏会を通して発表、共有する会です。これまでに開催されてきた都道府県の代表奏者により演奏され、タイトルのWISNYはW和歌山、I 茨城、S 静岡、N 長野、Y 山梨の頭文字。舞台上に配されたWの奏者が客席を取り囲むように配されたその他の奏者を統制しながら展開する趣向。5チャンネルの立体音響効果をねらっている。

 

 

Monolog, Deformed Canon and Unexpected Finale or Prelude (2019)

 2019年、トロンボーン奏者廣瀬大悟氏の委嘱により作曲したトロンボーンとチェロの2重奏曲。同年8月9日、石川県金沢市のヤギヤにおいてトロンボーン廣瀬大悟氏、チェロ井上貴信氏によって初演された。演奏場所をBack-Stage、Main-Stage、Sub-Stageの3カ所を設定し、基礎練習中のトロンボーン奏者と華やかな舞台で演奏会をする世界的チェロ奏者の2元中継を見ているかのような効果をねらった作品。

初演 室内楽の楽しみin 金沢 feat. 廣瀬大悟(Tb) プログラムノートより

モノローグ、変形されたカノンと意外なフィナーレまたは前奏曲
〜卑屈なトロンボーン奏者のための音楽詩〜

 最も信頼し敬愛する廣瀬氏からの依頼を断れるはずがない。指令は「トロンボーン奏者の、チェロ奏者に対する羨望、挑戦、挫折、諦観を音楽で描け」・・真の音楽を知るトロンボーン奏者だからこそ抱く感情・・・共感と共に、ふと別の感情が湧いた。皆様には同時刻に別々の空間で起こる出来事を2画面でご覧いただく。どうかトロンボーン奏者には拍手を送らないでほしい。その代わりチェロ奏者には盛大な拍手を!皆様も作品の一部となって。

 

天地創造 -Creation- (2021) NEW

 2021年、Sun Bones Trombone Trio の委嘱により作曲したトロンボーン3重奏曲。同年8月26日、日暮里サニーホールにおいてSun Bones Trombone Trio(武内紗和子、岡村哲朗、石井徹哉 各氏)によって初演された。身体表現や水を入れた瓶をストローで吹くなどの特殊な演奏を交えて、0からの創造と0への収束を描いた作品。

初演 Sun Bones Trombone Trio 東京公演 プログラムノートより

「天地創造 〜 Creation 〜」(2021)  作曲 大内邦靖 Kuniyasu Ouchi
1. 〜は創造する  c r e a t es
2. 這(は)うもの Crawling creatures
3. 泳ぐもの  Swimming creatures
4. 駆けるもの Running creatures
5. 飛ぶもの Flying creatures
6. 創造する(終焉させる)もの Creative (Terminative) creatures

 Sun Bones Trombone Trioとの最初の出会いは、数年前、拙作「System 7 for 3 Trombones」を取り上げてくださった大阪の演奏会に伺った時です。圧倒的な演奏技術と作品の意図を正確に汲んだ演出に大変感激したのをよく覚えています。
作者自身もトロンボーン3重奏という編成には強い思い入れがあり、4重奏を主流とするトロンボーンアンサンブルの世界において、Trioに拘って「ハイパートロンボーンズ」のメンバーとして活動してきました。このユニットも今年で結成30年を迎え、このタイミングで新世代のFreshなTrioが大活躍していることを感慨深く感じています。
 この度、大変光栄なことに新作の委嘱をいただき、18年も前に着想していたプランの具現化に取り組むことにしました。「天地創造 〜Creation〜」は、2003年、作者が突然の顔面神経麻痺を発症し、入院治療中に、アイデアとテーマを走り書きした五線譜が元になっています。当初は6重奏作品として計画したものですが、Sun Bones Trombone Trioの技術力に頼れば、3重奏として成立するのでは?!と考えたのです。
 ほんの僅かなエネルギーの揺らぎが爆発的な膨張に繋がり、空間や物質を生み出す・・そして個性的な様々な生物達(Creatures)の出現・・しかし、進化の頂点に立った生物は世界をまた無に返してしまう・・というシナリオを基軸に、決して描写的ではなく、あくまで創作のための漠然としたイメージとして作品を構築しました。C、Re♭、E、A、Si(Ti)♭、Esの6つの音をテーマとした6つの楽章ですが、この作品では特に「回文」(例:しんぶんし、ダンスがすんだ、山本山)的な構造に拘りました。各所に回文的フレーズを織り込み、最終楽章は1楽章の丸ごと逆再生となっています。
まあ、しかし、それらは作曲者の拘りでしかありません。観客の皆様には、それぞれの楽章の醸す個性的な雰囲気と奏者の鮮やかな技術や表現を、ニヤニヤしながらお楽しみいただけたら本望です。