Courtois 420BHR II / Hagmann valve, Gold Brass Bell

完売

「いい楽器に出会いました。」

 先日、楽器検品の折、素晴らしい楽器にめぐりあいました。コルトワ420BHR II です。
私の使用しているモデルと同タイプです。(私のは、マウスパイプが交換できるように改造してあります。)

 私のコルトワ歴はかれこれ17年にもなります。空前のコルトワブームの頃購入した400B以来、波のひいた現在までずっとコルトワです。当時はM.Bequet氏の素晴らしい音色に憧れて、猫も杓子もコルトワ!という時代で、今から考えるととんでもなく高額な楽器をためらいもなく買っちゃいました。それまで使っていた楽器と全然違う音がして、これが同じトロンボーンなのだろうか?と思ったほどです。実際、その音色の艶とかろやかさ、レスポンスの良さは特筆すべきで、M.Bequet氏の音の秘密がここにあったのかと納得させられました。

 しかしながら、その美しい音色ゆえの問題も見えてきました。他のメーカーの楽器とのマッチングです。当時一般的だった楽器と、特にフォルテ以上のレンジで音色に差異を生じてしまったように感じます。M.Bequet氏は自身の使用していたBackの42B黄色ベルに軽量スライドという組み合わせをモデルに開発に携わったようです。現在でもコルトワのトロンボーンはこの傾向のモデルを主流にラインナップしているようですが、先の問題点についてはマウスパイプやスライドの材質を変えることによって改良されています。また、スライドの設計にもバリエーションができ、ハグマンロータリー(ロータリーの中で空気の通り道が細くならないタイプ)を搭載したモデルも登場しています。

 今回出会った楽器もこのタイプ。赤ベルにハグマンロータリー搭載、軽量タイプではないスライド、ブラスのマウスパイプという組み合わせです。私自身もこのタイプを5年ほど使っていますが、この組み合わせのメリットは、コルトワらしさを残しながら他社の楽器とのマッチングに全く問題が無いことです。オーケストラ、ブラスアンサンブル、コンテンポラリーなど様々なシーンでオールマイティに使用できる点も魅力。オーケストラがメインのプレーヤーにはまた違った選択もあるかもしれませんが、「プーン」と吹いた音一発の色気や魅力、繊細な表現をしっとりした大人の音で聴かせたいプレーヤーにはもってこいの楽器です。

 とかく同じモデルでもその吹き心地や音色に差があるものです。同じように見えてもほんの少しずつ何かが違うんでしょうね。私はその違いの要因の多くがマウスパイプの出来のムラにあると思っています。そのため、自身の楽器はマウスパイプを交換できるように改造してあるのですが、今回出会ったこの楽器は、そもそも着いているマウスパイプの出来がいいのではないかと思うのです。息がスムーズに入っていく上、フォルテの許容量も充分にあります。こういった楽器はそうちょくちょく出てくるものではありませんし、「楽器として性能に問題がない。」程度のクォリティでは、私は皆様にこうしてお勧めするコメントなど書きません。

 この楽器の持つ深い音色を是非、体感していただきたいと思います。
同じモデルを使用しているユーザーとしても、自信を持って推薦できる逸品です。

大内邦靖
(トロンボーン奏者、玉川大学芸術学部講師)