1996年 6月号

バズィングでワンランク上をめざす!

 

 皆さん元気ですか。このセミナーでは、私の行なっている「Warm up」のスケジュールを紹介しながら、Trbを吹くための大事なポイントをお話ししています。
 先月は「身体をリラックスさせること」「肺をヤル気にさせること」の2点についてお話ししました。私は、この準備が整ったら次にバズィングのトレーニングをします。
 バズィングとは、唇を振動させて“ブー”という音を出すことです。そして、この時の口の構えや形をアンブシュアと言います。今月はこの「バズィング」と「アンブシュア」についてです。

 

●バズィングは音だしの近道

 みなさんはバズィングが出来ますか?数年前まで私はバズィングが大の苦手でした。特にマウスピースなしのバズィングは、長くキープすることも出来ないし、音域も狭く、まさに「カスカス」の状態でした。でも、楽器をつければ音は出ていたし、音域だって決して狭くはありませんでした。だから、「バズィングなんか出来なくたって関係ないよ」というのが持論でした。
 ところが、ある先生の紹介でバズィングのトレーニングを始めたところ、こりゃまぁ、徳川の埋蔵金でも見つけたかのような収穫にびっくり! まず、音に安定感がでる!そして、フレーズの途中で変な外しかたをしたり、スカッと出なかったりすることがほとんどなくなる!音の立ち上がりや唇の反応が良くなり、pのフレーズが怖くなくなる!おまけに耐久力までつくときた!!! ・・・こんなふうに書くと、怪しい通販の広告みたいで信憑性が薄れるかもしれないけど、私にとっては本当に一石二鳥どころか、三鳥も四鳥も得られる画期的なものでした。

 皆さんもどんなトレーニングか知りたい?まあ、そう焦らないで。トレーニングといったって、特に決まったパターンがあるわけでもないし、一日のうちに5分、せいぜいやっても10分くらいしか行わないものだから、それ自体はそう大したものではありません。むしろ、皆さんにとって大事なのは、これから話す、このトレーニングの「目的」をよく理解することです。
 全くの初心者の皆さんにとってバズィングの練習は、Trbで音を出すための最大の近道としてとても重要です。が、しかし、バズィングの練習ばかり1週間も2週間も、一日に1時間も2時間もしていてもなんの意味もありません。ある程度長い音が吹けるようになったら、どんどん楽器を吹いてください。極端な話、初心者の皆さんは、バズィングなんか出来なくたって楽器で音が出せればそれで充分です。なぜなら、楽器をならしている状態とバズィングをしている状態は全く同じというわけではないからです。

私がバズィングのトレーニングを勧めるのは、むしろ、更なるグレードアップを望む中・上級者の皆さんです。是非、次に挙げる「目的」を意識して、短い時間でいいから集中して取り組んでください。

1)唇のもっともよく振動するポイントを発見し、維持する。(身体に覚えさせる)
2)アンブシュアを形づくる筋肉の筋力アップ。

 譜例@〜Bは参考資料です。唇がうまく振動してくるまでがなかなか大変です。次のアンブシュアの項も参考にして、諦めずにがんばってください。できるようになったら、これらのパターンをもとにより広い音域でなめらかに動けるバリエーションを自分なりに考案してみてください。

 

●どんなアンブシュアでもOK

 いい音がでて、上手にコントロールできれば、どんなアンブシュアだってOKだと私は思います。ただ、一般的に次のことは要チェックです。

1)図Aのようにアゴのラインが反っているほうが良い。(図Bのように梅干しの種マークがでて、盛り上がっているとコントロールしにくい。)
2)上下の歯を噛んでしまわないこと。(奥歯を噛み締めた状態は禁止です。)

また、私の経験からすると、口のなかの容積を広めにとり、常に豊かな息を流してあげることが成功の秘訣であるように思います。